平成11年9月1日(第4号)
<お彼岸の話>

今年も秋のお彼岸の月がやってまいりました。
暑さ寒さも彼岸まで、といわれますように、お彼岸がまいりますと、ぐっとしのぎやすい季節になってまいります。

ところで、むかしから、
きょう彼岸悟りの種を蒔く日かな
などと言われております。

お彼岸にはお墓参りを致します。ご法事をなさるおうちもあります。お檀家さんのおうちを回るお寺もあります。
こうしてみると、なんだかお盆のようですが、お盆とは全く違います。

お盆にはご先祖様がおうちへかえってくるんですが、お彼岸は、ご先祖は十万億土のかなたの極楽浄土にいるんです。
極楽浄土は、西方弥陀の浄土といわれますように、西にあります。

余談ですが、浄土というのは極楽浄土ばかりではありません。
東方は瑠璃の浄土といってお薬師さまの浄土ですし、南方は補陀落浄土といって観音さまの浄土です。
さらに真言宗では、この世そのまま浄土なりと言って、その名を密厳浄土と言っております。

さて、本題にもどりますが、極楽浄土にいるご先祖さまや阿弥陀如来を拝むにはどうしたらいいでしょう。そう、西を向けばいいんですよね。
西といえば、太陽の沈む方角です。だから、ご先祖さまや阿弥陀さまを拝みたかったら、毎日お陽さまの沈む方を向いて掌を合わせればいいんですが、夏と冬では沈む方角が違います。
で、天文学といいますか暦法といいますか、それを調べてみますと、昼と夜の時間が等しくなる日こそ、太陽が真西に沈むということが解りました。そしてその日は年に二回あるという。
それじゃあ、その日を中日(なかび)として前後一週間を真西にある極楽浄土を拝むための法会(法会)の日にしよう、ということで、春秋二回のこのときをお彼岸と決めたということです。

それでは、お彼岸とはどういう意味かと申しますと、これは<到彼岸>という言葉を略したものなんです。
それじゃあ、<到彼岸>とはどういう意味かと申しますと、これは、サンスクリット語のパーラミータを訳したものなんです。
パーラミータ・・・・・どこかで聞いたような言葉ではありませんか。そう、般若心経によく出てくる『波羅蜜多』というのがそれです。
『波羅蜜多』というのはパーラミータを漢音で表したものなんです。
で、彼岸とは、呼んで字の如く、彼の岸、であります。彼の岸とは実は浄土のことを言います。

私たちの住んでいるこの世は<此の岸>です。<此の岸>に対して<彼の岸>=浄土なわけです。
昔の人・・・・平安時代の貴族たちは、この世のいろいろなわずらいごとを厭って、浄土三部経に出てくる阿弥陀如来のいる安楽浄土へなんとかして行きたいものだと常日頃から願っていたと申します。
早くあの岸へ渡りたい、早くあの岸へ到達したい、と切に願っていたわけです。こうした願いが<彼岸会を>宮中の行事として取り入れさせたのではないでしょうか。
しかし、到彼岸にはもう一つの意味があります。
それは<悟りの境地>という意味です。
つまり<彼岸=浄土・仏の国>から一歩進んで、本来の意味で捉ようとしたわけです。
そしてさきほど申しました<此岸>を、<私たちの住む世界>という意味から<迷いの境地>という意味にまで広げ、この迷いの岸から彼の悟りの岸へ渡って行こうと考えるようになってきたのです。

京都に「六波羅」という所があります。これは、六波羅蜜寺というお寺があるとことからつけられた地名です。
で、この六波羅蜜寺というお寺の名前は、先ほどから申し上げている到彼岸の<波羅蜜多>と同じ意味です。
なぜ六波羅蜜かといいますと、「波羅蜜多=到彼岸」を実現するためには、六つの実践徳目があるからです。
その六つの実践徳目をひとつずつクリアすることによって完全なる<到彼岸>が実現する、というのですが、私たちはそのそのうちのひとつでも実践できればいいということです。

それでは、その実践徳目というのを申し上げてみます。
その第一が布施。広く多くの人に施すということです。
第二が持戒。戒めを守る、法律を守る。約束を守る、などであります。
第三は忍辱。つらいことや苦しいことを耐え忍ぶこと、怒りや増長慢をおさえること。
第四が精進。ひとすじに努力すること。
第五が禅定。心を散乱させることなく深く静慮すること。
第六が智慧。ものごとを深く洞察し心理を見出すこと。
この六つを六波羅蜜と申します。このうちのひとつの徳目を修行することによって、私たちは<彼の岸=悟りの境地>に達することができるというのです。

たとえば、布施。お坊さんにあげるお金ばかりが布施ではありません。
布施には今言ったような坊さんに対してあげる金品これを財施といいますが、これに対して坊さんから皆さんに対してあげる読経、法話などを法施といいます。
また、お金を使わなくても人に対する施しは出来ます。無財の七施といって、次のようなものです。

まず第一が和顔施。やわらかな笑顔。
第二が慈顔施、やさしいまなざし。
第三に愛語施、やさしく温かな言葉をかけること。
第四が心慮施、こまやかな心くばり。
第五に捨身施、自分はさておき人のためにしてあげようという気持。
六番目は房舎施、一夜の宿りを施すこと。
最後に床座施。老人や体の悪い人へ席を譲ること。
この七つです。これらは日常生活の中でいつでも実践できるものばかりです。

きょう彼岸悟りの種を蒔く日かな

さあ、お彼岸というよい機会 悟りの種を蒔いてみませんか。




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